サービス 2017.04.1.

近江商人の三方良し

2016年現在、日本の労働力人口6,639万人のうち企業に雇用されているのは5720万人です。
全人口の86%が企業に雇用されています。

このように企業に雇用されるのが大多数といえますが、
雇用者という働き方は大正時代から企業の発展と共に生み出された働き方であり、
それまで日本人の大多数は自分で商売を営む自営業者でした。

日本は昔から商業が盛んでした。
特に江戸時代では大阪商人、伊勢商人、近江商人などが江戸や大阪、京都で活躍し、大変な賑わいを見せていました。

江戸時代から昭和にかけ、全国で活躍したのが近江商人です。

近江商人の流れを汲む主な企業として、
・大丸
・高島屋
・西武グループ
・伊藤忠商事
・住友財閥
・東レ
・ワコール
・トヨタ自動車
・日本生命
など錚々たる企業が挙げられます。

その近江商人が大事にしていたのが、「三方よし」と表現される理念です。

・売り手によし
・買い手によし
・世間によし

その企業理念が今、改めて注目されています。

近江商人が発祥の伊藤忠商事は2014年6月に「ひとりの商人、無数の使命」というコーポレートメッセージを発表した。

変化する顧客や社会の要請に応え、豊かさを提供するのが商社の使命で、「三方よし」の精神に立ち返るよう社員に呼びかけています。
そして、ここ数年業績が上向き、2016年3月期には初めて総合商社で純利益が首位になりました。

「好調なときこそ浮かれずに創業の原点に戻ろうと考えた」と公表しています。

近江商人はそれぞれ、今の滋賀県に置いた本店と全国の支店の間で各地の特産物を流通させる「諸国産物回し」と呼ぶ商法で成長しています。

買い手の卸業者が利益を得られるよう、薄利多売に徹したことや、ひそかに私財を投じて橋や道路などを整備した「陰徳善事」などが特徴です。
背景には比叡山延暦寺を創建した最澄の「忘己利他」の教えがあります。
それぞれの地域に受け入れてもらうための知恵がありました。

滋賀県の企業の中にはその精神を取り入れている例が多いです。
スーパーの平和堂は今年8月、滋賀県の県庁所在地である大津市中心部の商店街への出店を決めました。
買い物客が郊外の大型店などに流出、長年の不採算を理由に大手が今春、撤退した場所を引き継ぎます。

商店街を歩くと人影はまばらだが、地元から出店要請を受けた夏原平和社長は「滋賀に根差す企業として出店すべきだと考えた」と話します。
駐車場を増やして周辺の客を取り込み、商品配送コストを抑える努力をすれば、ぎりぎりで採算は合うとの計算がありました。

近江商人を模範とする精神で、こうした同業他社が尻込みをする場所に出店、営業を続ける平和堂の店舗は少なくないです。
夏原社長は、「創業58年を迎え、将来を見据えるには地域を大切にする近江商人の精神を実践しなければならない」と考えています。

近江商人を研究する同志社大学の末永国紀名誉教授は、
「日々、判断を迫られる経営者には基準が必要。だから全社員が共有できる、わかりやすい近江商人の理念が見直されている」と説明しています。
明確な理念が経営の発展に繋がります。
自己の利益、他社の利益、世間の利益を考えるのが大切です。

「三方よし」の実現の為に、お互いのメリットを確認しあう、推し量ることが大事で、コミュニケーション能力の向上も欠かせません。
企業としても個人としても継続的に発展していくために近江商人の理念から学ぶことは多いのではないでしょうか。

人はみな経営者です。
生まれた時から、人は自分の人生の経営者です。
仕事には雇用関係があります。しかし人生には雇用関係はありません。
自分の人生を経営するのは、会社の社長でもなく、上司先輩でもなく、親でもなく、人生のパートナーでもなく、自分自身なのです。

自分で自分の人生を経営する以上、雇われている雇われていないに関係なく、先人の商売の知恵、経験を自分の人生に活かす事は大事な事だと感じます。

チーム株式会社
代表取締役 太田泰史